契約不適合責任について

売買取引に関するトラブル事例

契約不適合とは

「契約の目的物(商品やサービスの内容)に、品質不良や品物違い、数量不足、その他契約の内容に適合しないもの(※)があるとき」を指します。

(※)明示ないし黙示の合意内容あるいは契約を巡る諸事情から認められる契約の趣旨(目的)に照らして、目的物に本来あるべき品質等に適合しているか否かで判断されます。

契約不適合が認められると

買主(債権者)は、売主(債務者)に対して、追完請求(目的物の修補・代替物の引渡し・不足分の引渡し)ができ、相当な期間内に売主が追完に応じない場合は、代金減額請求、損害賠償請求や契約解除をすることができます。

ただし、契約不適合責任を買主が主張するためには、契約不適合責任の期間内(一般的には引渡しから1年ですが、事案に応じて1年より長かったり、短かったりします)に、相手方に通知する必要があります(民法上は契約不適合を知った時から1年以内に通知する必要があります)

 

<契約書確認の際に注意すべき点>

<売買契約の場合>

まず、契約不適合責任に関する条項があるか

→ない:民法の定めの通り(基本的にはそのままで問題なし)

→ある:当該条項の内容について以下の点を確認する

契約不適合責任が認められる期間はどれくらいか

1年を基準に考えて、当該契約の契約不適合が判明する事案を考慮し、当該期間の長短は適正かどうか判断する

契約不適合責任が認められる場合が限定的になっていないか

例えば、契約不適合責任が認められる場合を売主の重過失(著しい注意義務違反)の場合のみに限定されていないかなど、契約不適合責任が認められる場合を限定する不利な内容になっていないか確認する

契約不適合責任の定めは民法上の任意規定のため、民法と別の定めを規定することが可能です。そのため、民法上の定めより厳しくしたり、緩和したりすることができます。

契約不適合責任の条項の確認の際は、自分がどちらの立場であるのかを意識して、不利な内容になっていないか確認しましょう。

 

 

売買取引に関するトラブル事例(契約の目的が問題になった事例)

売主と買主の担当者との間は、買主は菌末を使用した食品を国外(後に販売禁止国と判明)で販売する目的(認識)だったが、売主は買主が国内、ゆくゆくは国外(販売可能国)で販売したいという認識で売買取引が行われた。売主と買主との合意内容(認識)が相違していたため、買主が予定していた外国で販売出来ず、売主に対し契約不適合責任を追及して訴訟になった事案。

なお、商談過程において、売主側から買主側に対し、「海外でも問題なく食されている菌末である」旨の書類が提出されたため、買主側はこれにより国外での事業計画を進めてしまったと推測される。

 


<NGな点>

契約書の締結をしていなかったこと

会社の書面で誤解を与えてしまったこと(=販売に関する海外の規制などを社内全体で共有できていなかったこと)。

 

<その後の経過>

・買主側から訴訟(損害賠償請求)されたが、売主側が原審・控訴審ともに勝訴し、確定した(買主側は上告せず)

売主側が勝訴した要因は、契約書等を作成していなかったことから、主側の本売買契約の目的が明らかになっておらず、かつ、買主側の事業計画(海外の販売禁止国で販売すること)も明らかになっていなかったことから、売主側は買主側の契約の目的を知る由もなく、本売買契約の目的は、国外でも販売できる菌末と認められなかったため

 

<事前に対応すべきだったこと>

契約書などの契約の目的を証明する書類を作成すること。

契約書を締結していなかったことにより、契約の目的が双方で曖昧になり、トラブルとなってしまったこと

商談時は経緯や事実関係の記録を残すためにも、メモを残すことを癖づけるとともに、メールなども常に記録しておくこと(=訴訟対策)

社内での情報共有ができていなかったこと

商談用の資料として、社外に「海外でも問題なく食されている菌末である」旨の書類を提出してしまったが、他部署においてはこれが事実ではないことを把握していた

社内での情報共有はもとより、商談用の資料等については、随時アップデートして社内で共有していくこと

 

<小結>

本件事案では、買主側が契約の目的を明らかにせずに契約等を進めたことから、契約不適合責任が認められなかったものです(買主が契約の目的物となる菌末を国外で販売する商品の原料とする目的を明らかにしていなかったことから、本売買契約の目的とは認められなかったものです)。

逆に言えば、契約の目的物を特定するだけでは、契約の目的及び趣旨が明らかにならない場合があります。したがって、契約を締結するうえで、重要なポイント(契約の目的・趣旨を達成・実現するのに必須な条件など)を見極め、できる限り、それを明示し、具体的に書面等で合意することが肝要です。少なくとも、担当者レベルでは、互いの契約の目的・趣旨は共有しておくようにしましょう。

 

 

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